本年度の研究成果は、国語科教師が、領域「読むこと」の授業改善を、研究授業の一部である授業批評会での同僚教師の批評を手がかりに、どのような省察過程を通して図ろうとしているのか、複数の事例研究として解明できた点にある。具体的には、日本教育実践学会『教育実践学研究』12-2(2011年)、『和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要』20(2010年)、『和歌山大学教育学部紀要-人文科学-』61(2011年)にて論文発表し、全国大学国語教育学会第118回東京大会(2010年)で口頭発表を行った。研究方法として、インタビューによる教師の語りを分析考察した。教師の語りには、実践の具体的文脈が伴い、その教師ならではのリアリティ・真実性が反映されるからである。授業改善には、唯一絶対の脱文脈化された正解理論がないため、「反省的実践家」としての教師が、自身の授業を文脈的総合的に省察しつつ語るという方策が適している。複数の教師たちの語りから解明された成果は、以下の通りである。 同僚教師の批評を手がかりに、授業者教師は、1:1時間の授業を単元全体に位置づける、現実践を実践歴に位置づけるなど、より幅広い文脈の中で省察できる、2:国語科教材文解釈の方法を学習者に習熟させる学習指導過程で、どの段階でどんな知識を与えるべきかという必然性を導き出すことができる、3:国語科指導過程論について、定式化・抽象化された先行理論を機械的に適用するのではなく、課題の発見と解決策の模索という省察の過程を通して、必然性のある指導過程論が構築できる、のである。 本研究では、授業改善に関する、国語科教師の学習過程を解明した。先行研究では、授業改善のための過程ではなく、結果としての抽象化・脱文脈化・定式化された理論が提示されてきた。そのような中で、本研究は、課題解決方法ではなく、課題解決過程モデルを提示できた点に意義が見出される。
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