研究概要 |
本研究は,子どもたちが教師なしで相互作用的に算数・数学の問題を解決していく過程を,小学生から大学生の集団までを対象とし,自律的に意思決定する場面を研究することを目的としている. 今年度までで,小学生2グループ,中学生2グループ,高校生4グループ,大学生1グループ,大学院生1グループ,計10グループを調査することができた.その調査報告を,H22年1月の全国数学教育学会にて発表した.研究発表の内容としては,これまで集団の中で解決を図る場合,その解決に参画する主体者の発達段階や経験によって解決の共有の型が異なるのではと言う予想があったが,今回の調査で必ずしもそうではないことが分かった.小学生から大学院生まで比べても,利用している数学的な能力に変わりは余りなく,大学生・院生だからといって高度な数学的手法を用いて解決するといった違いは見られなかった.そして,解決の共有に関わっては,それぞれの認知的能力以上に,社会的,社会心理学的影響が大きいことが示唆された.つまり,実際に繰り広げられたコミュニケーションの状況や個々人の意識性から共有の型は刻々と変わり得るのである.また,成功的な解決を共有した集団と非成功的な解決を共有した集団との比較分析にも取り組むことができた. 今後は,調査に適する教材づくりと調査方法を検討し,単に数学の問題ではなく,より意思決定を要求するような数学的課題で調査に取組み,自律的に意思決定する過程の分析を継続する。
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