研究概要 |
本研究は,子どもたちが教師なしで相互作用的に問題を解決していく過程を,小学生から大学生の集団までを対象とし,自律的に意思決定する場面を研究することを目的としている. 今年度,小学生2グループ,中学生2グループ,高校生2グループ,大学生1グループ,計7グループを調査した.昨年度は数学的な課題における協力的な解決過程を調査したが,今年度は必ずしも正解が一つには決まらない日常場面の課題解決を調査した. その結果,どのグループにおいても数学的な検討は図られたものの,その解を積極的にそのグループの意思決定に利用したグループはほとんどなかった.高1と大学生のグループのみ,数学的にも利点のある結果をそのグループの意思決定の結論として採用する結果となったが,その数学的な解がグループとしての意思決定の積極的な根拠にまではなってはいない.また,その意思決定の過程においても当初取り組んでいた課題の人数設定や解決の観点など,適宜,変更されながらの解決であり,実際の日常場面で数学的な活動が取り組まれる複雑さが明らかとなった.加えて,幼い年齢のグループほど,建設的な意見の構成はなく,個々の意見の発表で表明であったり,個々の意見の価値を見極められなかったりして,議論が深まっていないことも明らかになった. 実際の日常場面で数学的な活動を期待する場合,どの意見に焦点化したり,どんな判断基準に価値を見いだし,その観点の中で検討させるか,教師役にもあたるような学習者の存在が重要であることが分かった.こうした点から,日常生活に真に活用できる真正な活用力の育成を目指した学習過程での教師の役割を再確認することもできた.
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