研究概要 |
H21年度に引き続き,米国視察によって収集した資料および授業実践記録の分析を行った。授業記録より,学習内容としてケアについて学ぶ高等学校の専門科目「児童発達II」では,課外活動として行った幼稚園実習の気づきを検討する場面で,ケアの質や教員と園児の関わりの相互作用性を生徒の議論によって導き出すなど,専門職としてのケアリング形成の重要性が扱われていた。他方,食生活などの授業でも,生徒同士の関わりを促すことでケアリング形成をはかる工夫がみられた。とくに課外活動であるFCCLA活動の活用が視察先の多くの教師に意識されており,授業内外でのピアエデュケーションが重視されていた。FCCLA本部の活動として,授業とFCCLA活動を連携させる事例が収集されるなど日本の家庭クラブ活動活性化にもつながるアイデアを得ることができた。 また,高等学校家庭基礎の「高齢者の生活と福祉」を題材に,ケアリング視点を導入して試行的に行った授業実践(4時間)の評価を行った。体験的介助実習と,授業と関わらせた高齢者の学習会を少人数の家庭クラブ活動で実施してクラス全体にフィードバックする方法を取りいれたことで,ケアの相互性を意識づけるなどケアリング形成に寄与する可能性が示された。一方,授業および家庭クラブ活動をとおして,生徒の自主的活動やピアエデュケーションにつながる意欲づけの必要性が課題として残った。 以上の知見と学習指導要領等の整理を行い,家庭科の学習内容として小学校では家族との関わり,中学校,高等学校では家族と地域の人との関わりを高める視点と,家庭科の指導方法の工夫としてピアエデュケーションや議論などを取りいれた授業プログラム開発に着手した。
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