前年度までの研究で整理した家庭科における人と人との関わりに関する学習内容から,各学校段階に特徴的な視点を含む内容について,授業分析を行った。小学校では,自分と家族の関わりについて,家族とともにすごす時間を考え生活時間や関わり方を工夫する授業,中学校では,家族の家事労働分担をテーマとしたロールプレイの授業,高等学校では,高齢者の生活と福祉を題材に介助実習を取りいれた授業を事例に,授業構成や児童の認識を分析した。その結果,家庭の状況に応じて継続的な実践を促す指導の有用性や,短時間であっても共通の実習体験をもたせ人と人との関わりを考えさせることの有用性が明らかとなった。 小中高等学校での実践を総括し,家庭科における人と人との関わりを育むための授業プログラム実施の意義と課題が考察された。まず,ケアリング視点をもって家族や高齢者など人のケアに関わる授業を構成することは,家事労働や介護が,ケアする側からケアされる側への一方的営みでなく,人と人との相互作用により営まれる生活行為であるとの認識を児童生徒にもたせる意義がある。また,人と人との関わりを学ぶ際に,児童生徒同士が学び合う場の設定は有効であると確認されたものの,実際の演習や実習指導において,教師の働きかけが意図的になされなかったために学び合いが機能しない授業場面も散見され,教師の力量に大きく左右されないための精緻な教材や指導書づくりの必要性が課題として示された。
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