研究概要 |
本研究は,国語科読むことの学習において,類似性に基づいた推論を促す手立てを開発することを目的としている。 まず類推が、教室の中で用いられる場合に、学習者の読むという行為にどのような役割を果たすのか、解明にあたった。小学2年生の「スイミー」の授業分析、「きつねのおきゃくさま」の授業分析、間テクスト性概念の検討を行ったところ、次の知見が得られた。(1) 類推は解釈方略であると同時に読書経験を拡張する方略であるということ。(2) 類推が成功するには参加者に類推と認知され承認される必要があること。成功した類推は持ち込んだカテゴリーを強調することになるということ。(3) 類推を促すためには学習者の選択と貢献とが尊重される共同的な学習環境が必要であるということ。 次に類推を促す手立てを検討した。これまでの研究で、小集団討議のような共同的な学習形態が,類推を促すことがわかっており、リテラチャーサークルに代表される小集団の読書プログラムの検討を行ったところ、以下の知見が得られた。(1) 教材を選択し、話し合う話題を決定し、発言を評価するといった、小集団討議に関わる様々な権限を、学習者の自己決定に委ねていくこと。(2) 役割シートを足がかりとしながらも、多様な反応が、仲間と話を続けることでより多くの考えが得られるという期待に支えられて、差し出され、受け入れられる共同的学習の場となること。(3) 明示的な教授を行うことと、学習促進者や参加者となることとのバランスを図りながら、とりわけ、討議の足場作りの役割を、教師が担っていくこと。
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