研究概要 |
本研究は,国語科読むことの学習において,類似性に基づいた推論を促す手立てを開発することを目的としている。 まず類推が、教室の中で用いられる場合に、学習者の読むという行為にどのような役割を果たすのか、解明にあたった。これまで、次の3点の知見が得られている。(1)類推は解釈方略であると同時に読書経験を拡張する方略であるということ。(2)類推が成功するには参加者に類推と認知され承認される必要があること。成功した類推は持ち込んだカテゴリーを強調することになるということ。(3)類推を促すためには学習者の選択と貢献とが尊重される共同的な学習環境が必要であるということ。 その上で、こうした条件を成立させる学習活動の開発・検証を行った。沖縄市立高原小学校6年生、京都府私立東山中学校2年生、京都教育大学附属桃山小学校4年生および兵庫県丹波市立春日中学校3年生の教室において、小集団で一文を読む学習を組織した。検証の結果、こうした学習活動が類似性に基づいた推論を促し、さらに次のような効果を生むことがわかった。(1)適切な手立てを用意すれば,一人でたどり着けなかった解釈と出会い,納得し,楽しさを感じる対話の場を作ることができるということ。(2)学習者の関わりから生じる学習の意義を実感し,達成感を持つことが,次の活動への積極的な関わり合いを生みだしていくということ。(3)一人ひとりが解釈を話し,反応を得て,仲間の解釈を聞く対話の段階は,読むことの学習を成立させる条件であり,省略できないということ。
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