本年度は、昨年度作成したワークシートを2校の小学校にて実践し、ワークシートの改良を加えた。具体的には、体験者に共感共苦するための当事者性のある発問を構成し、ワークシートを作成したのであるが、体験者の最大の悩みであった「米兵に玩具にされる」という恐怖をどのように小学校6年生が想像できるのかという点について授業実践を通じて検証した。ワークシートと発問の方法の工夫により、子どもたちが体験者と同じ葛藤をすることが明らかになった。沖縄戦体験を生き残った者の選択としての苦しみを子どもなりに考えることのできる教材となったのが大きな成果であった。 また「モノ」を活用した授業ということで、「艦砲の破片(爆弾の破片)」を観察するという授業は、子どもたちの五感を刺激する教材としての有効性が明らかになった。具体的には、地上戦を想起させる重要な「モノ」として、どのように人々が死んでいくのかをリアリティーをもって考える素材となることがわかった。そのことが、ガマ(自然洞窟)に避難するという必然性を生み出すきっかけとなり、沖縄戦における「ガマ」の重要性を考える重要な教材となっていることも明らかになった。 また、離島における素材研究については、引き続き西表島の戦争遺跡の調査に取り組んだ。そこでは、新たな遺構の発見という成果を出すことはできなかったが、戦争遺跡の確認調査としての一歩となった。 これらの成果は、報告書として子どもたちの学びの記録をつけて冊子化し、関係者の配布を行った。
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