若年者は、進路の決定に悩み、安定した職業・キャリアに就くことができないまま方向を見失っており、それがさまざまな形で若年者の労働問題を引き起こしている。その背景として勤労意識の希薄化の傾向がある。希望喪失が問題視されている現代社会において、若年者の希望育成が必要であり、学校教育の課題のあり方を示唆することである。これを踏まえて、本研究の目的は、若年者の希望の保有がキャリア形成と早期離職に及ぼす影響を明らかにすることである。 昨年度の研究成果をふまえて、若年者より希望の保有とキャリア形成の関連性について分析を行った。その結果、友人の数、家族からの期待、家族からの愛情等の関連性があり、特に希望を生み出す精神的・手段的指示が得られる人的手段としての「対人関係」、(相関係数α=.91)、希望の発生と希望の維持・促進につながるものとしての「活力」、(相関係数α=.88)と強い相関関係があった。 希望を保有していないと回答した対象者の多くが将来につながる苦労をを否定し、苦労を乗り越えて報われるという体験をしておらず、困難な状況に出ると苦労に耐えられなかったり、苦労に直面するのを避けようとする傾向があり、早期離職に影響を与えていることが示された。また、ネガティブな未来志向をもっている対象者についても早期離職の可能性があることも示された。 一方、ポジティブな未来志向をもっている対象者は、希望が失望しても、つらく苦労した経験をふまえて次への新しい希望へと柔軟に修正できること明らかとなり、自分のことを評価してくれたり期待してくれたりする人や自分と異なる情報をもっている人とのつながりをもつことで、早期離職の予防につながることを示唆した。
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