研究概要 |
中間年度である本年度は,前年度に明らかになったICT活用の可能性と限界を踏まえ,中間支援者による人的支援,小型携帯端末を活用した遠隔PCテイクの試行的実践を中心に,以下の取り組みを行った。 1.PCテイカーの組織化,聴覚障害学生の主体的参加の取り組み(研究1) 21年度に創設された学生によるPCテイカーサークルを中心に,PCテイカー養成講座等を企画,実施した。聴覚障害学生が中心となるよう意識付けを行おうとしながらも,「テイカー養成」といった,聞こえる学生にとって動き易さのある企画が中心に設定された。結果,聴覚障害学生が中心的な役割を果たしにくくなってしまうことが,次年度に向けた課題として確認された。 2.複数台の小型携帯端末の同時利用による遠隔連係PCテイクによる情報保障支援実施状況の分析(研究2) 初年度の研究成果を踏まえ,さらにiPadやiPod touch等,機能の異なる複数台の表示端末を組み合わせて字幕表示を行い,利用場面にあわせた端末利用の効果について試行的運用を行った。その結果,表示装置としては必ずしも小型軽量なものが最善ではなく,座って移動が可能な場合には比較的表示領域の大きな端末も有効であることが示唆された。 3.聴覚障害学生の発言権確保において音声による割り込みがもたらす問題についての検証(研究3) 視覚的な情報を用いてディスカッションに参加しようとした場合,他の学生等が手話を用いたとしても,音声による発言権の確保,割り込みが行われることで,聴覚障害学生の発言権が奪われてしまう現象がある。その具体的な様相を分析すべく,手話を日常的に用いる聴覚障害学生と,同学年同専攻で手話を使用可能な学生による会話を収録,会話分析を行った。音声が併用されることで,聴覚障害学生には話者交代がわかりにくくなる場面が確認された。現在,分析作業を継続中である。
|