研究概要 |
目的 自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder : ASD)は,社会的相互関係の構築が障害される広汎性発達障害である。我々はvirtual realityの手法を用い,被験者が実際の対人場面に近い状況下で他者の感情をどのように読み取るかを測定できる感情認知測定ソフト(Virtual Reality Test : VRT)を開発した。本研究は,VRTの有用性の確立を目的とした。 対象と方法 8歳~18歳までのASD児童・生徒34名を対象とした(ASD群)。ASDの診断は,有用性が確立されているAutism Diagnostic Interview-Revised (ADI-R)に従った。比較対照群は,年齢・性別・IQ等を可能な限り一致させた70名(健常群)。VRTの信頼性は,Cronbach's coefficient alphaを用いて確認した。また,construct validityを確立するために,VRTの得点(Score range 0-24)について,(1)ASD群と健常群に有意な差が認められるかどうか,(2)健常群において年齢群別で有意な差が認められるかどうか,(3)ASD群にこころの理論課題を施行し,達成度別に群分けを行ない,各群間に有意な差が認められるかどうか,について検討を行った。 結果 Cronbachのα係数は,0.70のが得られた。また,VRT得点では、両群間に有意差が認められた(p<.001)。さらに,心の理論課題については,ASD群において、一次の誤信念課題を通過できない群は,一次の誤信念課題を通過できる群(p<.01),二次の誤信念課題を通過できる群(p<.001)の両群と比較して、VRT得点が有意に低かった。以上の結果から、本検査の信頼性と妥当性が確立された。
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