近年、小児医療のめざましい発展により、病弱児の病気の治癒率は確実に高まり、患児が前籍校に復帰する機会が増加している。それと共に、病弱児のQOL(Quality of Life)の向上に関しては、以前に増して高い関心が向けられるようになりつつある。本研究の目的は、通常学級の健康な子ども対象にデジタルコンテンツを使用した授業を実施し、授業前と授業後の病弱児に対するクラスメイトの知識・意識の変容を比較し、検討することであった。 研究手続きとして、先にデジタルコンテンツを用いた授業を実施する介入クラスと光後に授業を実施する待機クラスを設定し、介入クラス・待機クラスとも前期測定・後期測定の授業終了後において、3項目(入院中の病弱児に関する理解尺度項目・復学後の病弱児に関する理解尺度項目・病弱児に対する共感性尺度項目)から成る質問紙を実施した。前期測定時期と後期測定時期の間は3ヵ月間設けた。 分析の結果から、デジタルコンテンツを用いた授業は、病弱児に対するクラスメイトの知識・意識の向上に関しては、一定の効果を示すことが推察された。特に、共感性項目については、デジタルコンテンツ内容とは直接関連の少ない内容であったにも関わらず、授業前と授業後に有意な差が認められた。したがって、本研究にて実施された授業は、健康な子どもの病弱児に対する共感性の向上、および実際の援助行動の促進に関して効果的であることが推察された。本研究の今後の展開として、介入効果の縦断的な検討、効果測定における時期と場所への配慮、実際に病弱児がクラスに在籍するケースでのプログラム実施の検討の必要性が指摘された。
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