研究概要 |
近年の著しい小児医療の進歩は,多くの難治性疾患の長期予後を著しく改善し,治癒率は確実に高まり,入院する前に通っていた学校に復帰する患児が大幅に増加している。多くの病弱児は退院後も外来治療を必要とするが,彼らが通常の学級で適応的な生活をおくるにあたって,クラスメイトの患児に対する意識や知識の向上は重要な要因となる。本研究では,デジタルコンテンツの活用によって,クラスメイトの病弱児に対する共感性の向上、および実際の援助行動が促進されることを示唆してきた。本研究では,さらにデジタルコンテンツの効果をより高めるための,その活用法の課題の検討を行った。その結果,プログラムの中でのデジタルコンテンツを用いるタイミングが中心的な課題としてあげられ,デジタルコンテンツに過度に依存するのではなく,患児自らが疾患を理解し,主体的にクラスメイトに疾患の説明をすることも有用であることが推察された。本研究で用いたデジタルコンテンツは,患児自身が病気のことを理解するための内容も含まれている。小児がん患児の集団を対象として,疾患の理解を促すことを目的にプログラムを計画した。対象者は,当日参加を含めた6名の小児がん患児であったが,年齢の範囲が幅広く,視覚障害のある患児も含まれていた。患児が疾患を理解し,主体的な説明が可能となるためには,個々の多様性に応じたプログラムを実施し,自らサポートの必要性を説明できる力の獲得を主眼に置いた内容が必要であることが示唆された。今後は,デジタルコンテンツのメリットを活かしながら,実際に病弱児がクラスに在籍する場合の効果的なプログラム構築を視野に入れている。
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