研究概要 |
研究の全体構想は、北欧福祉国家の形成に象徴される社会政策・教育政策と、通常教育改革およびインクルーシブ教育の成立の関連を検討することである。北欧福祉国家とはEsping-Andersen, G.(1990)が指摘する普遍主義型(社会民主主義型・北欧型)レジームの類型を意味しており、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドを研究対象とした。研究の具体的な目的は、北欧福祉国家においてインクルーシブ教育がいかに展開し、実践されているかを歴史的、理論的、制度的、実践的に明らかにすることである。 平成21年度には、文献研究と訪問調査研究を実施した。文献研究においては、インクルージョン教育が成立する社会的背景とインクルージョン教育の歴史的展開を検討した。スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド各国における福祉国家形成や社会政策などに関する政党の政策・スローガンなどを検討しつつ、とくに教育政策の展開およびインクルーシブ教育の萌芽・成立・展開過程を分析した。また、インクルーシブ教育の史的展開は、義務教育制度開始から障害児学校の設置、通常学級からの特別な学級の分離、インテグレーションの志向、インクルーシブ教育への転換など、メルクマールとなる事項を意識しつつ、各国におけるインクルーシブ教育の系譜を明らかにした。 訪問調査研究の対象国は、日本国内における研究資料の乏しいフィンランドとした。とくにヘルシンキ市においての実地調査を行った。現地ではとくに教員養成制度や学力向上とインクルーシブ教育の関連について調査を行った。
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