19 世紀第四四半期にアメリカの都市部公立学校内に創設された通学制聾学校(現在の特殊学級に類似の形態)が 20 世紀初頭にかけて発展した背景について明らかにすることを目的とした。とくにその発展に寄与したとされる口話法(手話等を用いず読唇・発音等を通して教授する方法)がその発展にどのように関与したのかを、口話法の支持者、都市における貧困・移民などの社会問題、公立学校制度一般の状況との関連から検討した。中産層の市民や聾児の親たちが口話法という方法を支持し彼らのような子どもの教育に関与できる親たちの存在が口話法の適用と成否に関わっていたこと、本来不就学対策として振興された通学制聾学校設置が口話法の普及によって貧困層や学業不振になりやすい要因をもつ子どもたちの学業格差を生じさせる可能性をもったこと、公立学校一般で関心が高まっていた学業不振児の問題等との関連で聾児の知的能力分別と口話法適用の可否が実施されていたこと等が明らかとなった。
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