本研究では、発達障害児の早期発見・早期支援に関わる具体的な支援内容の構築について、(1)幼児期における読み書きに関わる認知機能の特徴とその発達および(2)幼児における読み書き障害のリスク評価とその支援の2点について検討することを目的としている。 本年度は、主として幼児期における読み書きに関わる認知機能における脳内処理過程について明らかにするために、健常成人を対象とした予備的検討を実施した。予備的検討では、読み書きに関わる認知能力の中でも、言語性ワーキングメモリと音韻意識の関係性に注目するため、単語を音節(モーラ)単位で逆唱する課題(単語逆唱課題)を遂行中の脳血流動態について、近赤外線光トポグラフィ(NIRS)を用いて検討した。その結果、3音節単語を逆唱する課題に比べ、ワーキングメモリの負荷が高い5音節単語を逆唱する課題において、刺激を聴覚呈示した条件、および視覚呈示した条件ともに前頭領域で血流の増大が認められた。さらに刺激を聴覚呈示した条件では、前頭領域に加え、左右側頭領域の血流増大も認められた。これらの結果から、言語性ワーキングメモリを用いる課題では、課題における記憶負荷、および刺激の呈示モダリティによって脳内の処理は異なることが推察された。以上の結果は、今後読み書きの習得途上にある幼児における認知機能に関わる脳内処理過程について検討する際に重要な情報となる。次年度は小児を対象としたNIRSの実験を実施するとともに、幼稚園・小学校に協力を依頼し、行動指標によるデータ収集を実施する予定である。
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