本研究では、発達障害児の早期発見・早期支援に関わる具体的な支援内容の構築について、主として学習障害に焦点を当て、(1)幼児期における読み書きに関わる認知機能の特徴とその発達および(2) 幼児における読み書き障害のリスク評価とその支援の2点について検討することを目的としている。 上記の研究の目的を達成するため、本年度は昨年度実施した行動調査のフォローアップを実施した。対象は、幼稚園年長組に在籍し、昨年度の調査に参加した37名であった。認知機能の評価には、①音韻分解・抽出課題、②音韻復号課題、③単語逆唱課題、④フロスティッグ視知覚検査法の「空間における位置」課題を用いた。一方、かな文字読みの評価として、ひらがな単文字の読みテストを用いた。 ひらがな単文字読みに関しては、年中段階では正答率が10~100%と個人差が大きかったのに対し、年長になると全ての対象児で60%以上であった。このことから、年中から年長の段階にかけて、ひらがな読みの習得は全体的に向上したことがうかがえた。さらに年中・年長それぞれの時期において、ひらがな読みの習得にどのような認知機能が関与しているのかについて検討するため、ひらが音読課題の正答数を目的変数、その他の課題成績を予測変数として重回帰分析を実施した。その結果、ひらがな読みの習得に関して十分でない対象児が多かった年中の段階では、音節分解の能力が読みの習得に大きく影響を及ぼすが、年長の段階になると、読みの習得が定着するに伴い、音節分解のような音韻意識に関する能力よりもむしろ、呼称速度に反映されるような、音韻的再符号化における流暢性の方が読みの習熟に関与することが推測された。本研究結果は、読みの習得に困難を示す子どものリスクを評価するうえで、重要な基礎データとなりうることが期待される。
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