研究概要 |
本研究の目的は,モチーフのL関数と一般超幾何関数や多重対数関数の関係を調べることである.L関数という数論幾何学の中心的な対象に新しい具体的な結果を与えることは非常に有意義であり,そこから新しい理論的な展開を探ることは重要である. 本年度は,それまでに得られた結果(フェルマー曲線に付随するモチーフのレギュレーターと一般超幾何関数の関係について,または,アーベル・ヤコビ写像と一般超幾何関数の特殊値について)を国際研究集会などで発表し,専門家らと議論を重ねた.特に,レギュレーターに関しては,そのp進類似やクライン曲線の研究への応用について前進することができた. また,クライン曲線のL関数および代数的K群を,7次のフェルマー曲線およびある虚数乗法をもつ楕円曲線との関係を用いて計算した.この場合のベイリンソン予想の証明に前進したといえる。 2011年3月に訪問したJussieu数学研究所のBruno Kahn氏とは,代数的K理論とイデアル類群について議論を深めた.円分体のイデアル類群の偶数成分の性質は有理整数環の代数的K群と関係があることが分かっているが,それを岩澤理論を用いてヤコビ和の(局所単数としての)微分と関係づけ,その結果,有限体の新しい性質が導かれた.これは新しい数論的現象であると思われ,引き続き研究する重要性があると思われる.
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