研究課題/領域番号 |
21740002
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大坪 紀之 千葉大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (60332566)
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キーワード | 数論幾何学 / モチーフ / L関数 / 一般超幾何関数 / 多重対数関数 / 代数的サイクル / モチーフ的コホモロジー / ベイリンソン予想 |
研究概要 |
当研究では、モチーフのL関数と一般超幾何関数や一般多重対数関数の間の関係を調べることが目的である。とくに、ベイリンソン予想、ブロック・加藤予想という最も重要な問題の具体例を与えることには大きな意義があると考えられる。 今年度はとくに、クライン曲線(7次のフェルマー曲線の商)のモチーフ的コホモロジー群(代数的K群)、L関数、および対応していると予想される一般超幾何関数について研究をすすめた。L関数と一般超幾何関数の関係はまだほとんど知られていないが、虚数乗法をもつ楕円曲線の場合に申請者によって得られた結果と、保型形式論的な方法で解析的に得られたRogers-Zudilinによる結果を比較し、クライン曲線の場合への応用を研究した。また、これらと算術幾何平均の一般化との関係を探った。 一方、フェルマー多様体のL関数はヤコビ和のヘッケ指標のL関数であり、古くから重要な研究対象である。今年度は、ヤコビ和の(局所体の単数としての一意化元に関する)微分を計算した。この値は、岩澤理論によって、円分体(pを素数として、有理数体に1のp乗根を添加した体)のイデアル類群の位数を記述するものである。一方、円単数のべき剰余指標による像を計算し、それらとヤコビ和の微分との間の簡明な記述を得た。これらはクンマー・ヴァンディヴァーと密接な関係があり興味深い。上の結果によって、この予想の原始根を用いた新しい判定法が得ることができたし、この予想の正否に関する新しい視点を得ることができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円単数とヤコビ和の微分という、より代数的な方向に研究が広がったことにより、より幾何的な方向のp進的な研究が遅れている。一方、L関数と一般超幾何関数の関係については、問題解決への糸口が見えてきており、その意味では進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
円単数とヤコビ和の微分について得られた結果を発表し、専門家の意見を参考にし、さらに研究を進める。とくに、岩澤理論との関係を深く調べる予定である。L関数と一般超幾何関数の関係については、今まで通り保型形式論を用いた、解析的な研究をすすめる。まずはクライン曲線に対応する場合に明らかすることを目標とする。今まで行ってきたBruno Kahn氏らとの研究連絡を継続し、国内外の研究集会に参加するなど、最新の動向を吸収して研究に役立てる。
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