当研究の目的は、モチーフのL関数と一般超幾何関数や一般多重対数関数の間の関係を調べることである。ベイリンソン予想、ブロック・加藤予想といった中心的な問題を、数論的に重要な具体的な場合に考察してきた。 とくに、フェルマー・モチーフのモチーフ的コホモロジーとそのレギュレーター、およびそれらとL関数の特殊値について研究を進めてきた。フェルマー・モチーフはヤコビ和のモチーフと言うことができるが、ヤコビ和は19世紀以来、代数的整数論、とくに円分体論の中心的な研究対象であり、その性質を知ることは円分体論の進展に重要な意味を持つ。 今年度はとくに、ヤコビ和の局所単数としての(その一意化元に関する)対数微分についての研究を行った。これはコーツ・ワイルズ写像の一部であるクンマー写像を計算するということである。円単数の対数微分は本質的にベルヌイ数であり、p進L関数(リーマン・ゼータ関数のp進類似)の一部である。この研究で分かったことは、ヤコビ和の対数微分は原始根を用いて定義されるあるベルヌイ数の類似物(のシステム)で書けるということ、またそれらは円単数のべき剰余記号と関係があること、さらに、それらベルヌイ数の類似物の間には「モチーフ的」な相互関係が存在するということである。 得られた結果は東北大学で発表し、参加者と、とくにその岩澤理論的な側面について議論を行った。また、2013年2月に行ったパリ出張ではブルーノ・カーン氏(ジュシュー数学研究所)と研究打合せを行い、とくに上記のベルヌイ数の類似物のモチーフ的な側面について議論を行い、新たな視点を得ることができた。
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