研究概要 |
本研究の研究対象の一つである有理数体上定義された簡約代数群とその極大放物部分群から定義されるゼータ関数に対して,平成21年度,小森靖(立教大),Haseo Ki(韓国・延世大)との共同研究により,半単純群に対応するゼータ関数に対しては,弱い形でのRiemann予想の類似が一般的に成り立つという結果を得た.但し,この時点ではこの結果を支持する背後の構造の理解は若干不十分であった.これを補う形で,22年度,この成果の証明の改良,及び簡略化を行い,論文としてまとめた.この簡略化を行うため,たとえばルート系の構造に関する新しい構造を示す事が必要であった.これにより,本研究の目標の一つであったこの種のゼータ関数の零点分布,及びその幾何学的背景の解明という部分に関して,一定の成果が得られた事となる. この他,本研究の目的の一つとなっているゼータ関数の零点分布の関数解析的な理解に対して,上半平面上のバーディ空間のモデル部分空間の理論を,数論的に定義されるゼータ関数の零点分布の解析に応用する研究を開始した.最初の成果として,Riemann予想とある種の級数の正値性との同値性が得られた.これは本研究で推進中の,関数解析における平均周期性の概念と,数論的ゼータ関数の解析的性質とを高次元ゼータ積分の理論を通して関連付ける研究から派生している.特にゼータ積分の境界項の漸近挙動を扱う中で、上で述べたモデル部分空間の有用が見出された.
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