本研究の主たる研究テーマは、コンフォーマル超代数または超ヴィラソロ代数と呼ばれる無限次元超リー代数の表現論およびその数理物理学への応用であった。コンフォーマル超代数の中でも、ヌブ・シュワルツセクター以外の超リー代数は、頂点作用素超代数の構造を持たないため、数学的に十分に研究されているとは言えない。そこで本研究では、ヌブ・シュワルツセクターに限定する事なく、コンフォーマル超代数の表現の構造を、数理物理に応用するのに十分なレベルまで明らかにすることを目標としていた。 平成22年度は、庵原氏(リヨン大学)との共同研究で、ヴィラソロ代数の表現論に関する図書を出版した。この本はヴィラソロ代数の表現論に関する基本事項(既約表現の分類、ヴァーマ加群やフォック加群の構造定理、ヴィラソロ代数の表現論の数理物理への応用等)をまとめたものである。これらの基本事項は、本研究の研究対象であるコンフォーマル超代数の表現論を研究する上でも重要となるが、これまで文献的には散逸していた。この図書の出版により、今後は本研究課題や関連するテーマについての論文作成において効率化が図られると思われる。 平成22年度は、上記の図書の執筆以外に、超リー代数の場合にエンライト関手と呼ばれる関手の構成を行った。この成果は、コンフォーマル超代数の表現論と密接に関わるアフィン超リー代数の表現の構造を調べる際に有効であると期待される。このエンライト関手に関する結果については、現時点で論文を執筆中であり、平成23年度も引き続き研究を行う予定である。
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