研究概要 |
高次元Auslander-Reiten理論とその団(クラスター)理論への応用を調べ,2010年度日本数学会春季賞を受賞した.受賞題目は「多元環およびCohen-Macaulay加群の表現に関する研究」. 高次元Auslander-Reiten理論においては,n有限表現型とよばれるクラスの有限次元多元環が重要である.古典的なGabrielの定理により,1有限表現型多元環は,Dynkin型クイバーの道多元環として分類されるが,2以上のnに対しては,n有限表現型多元環の分類は知られていない,本年度はHerschendとの共同研究において,2有限表現型多元環を,自己入射的なポテンシャル付きクイバーの切断ヤコビ多元環として特徴付ける構造定理を与えた.さらにポテンシャルの自己入射性が中由軌道に沿った変異で保たれることを示し,その応用として数多くの2有限表現型多元環を構成することに成功した. 高次元Auslander-Reiten理論における,もう一つの重要な対象として,団傾加群(非可換特異点解消)を持つCohen-Macaulay環が挙げられる.従来は孤立特異点の場合に限定して研究を進めていたが,本年度はWemyssとの共同研究において,古典的なAuslander-Reiten双対性を孤立特異点とは限らない場合に拡張する事に成功し,その応用として(孤立特異点とは限らない)Cohen-Macaulay環上の団傾加群に対して,導来圏同値および変異に関する基礎理論を構築した. Aiharaとの共同研究で,団傾変異の傾理論における類似物として,準傾変異(silting mutation)を導入し,その基礎理論を構築した.特に半順序に関するRiedtmann-Schofield, Happel-Ungerの理論を,準傾変異に対して一般化することに成功した. R.Takahashiとの共同研究で,孤立商特異点上のCohen-Macaulay加群の安定圏に,傾対象が存在することを示した,Amiot, Reiten, Todorovとの共同研究では,クイバーの道多元環上の有限なねじれ部分圏と,Coxeter群の元でc-sortableと呼ばれるものとの一対一対応を与えた. 3月に日本学術振興会賞を受賞した.受賞題目は「整環の表現論」.
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