研究概要 |
平成22年度は大きく分けて二つの研究成果を得た.一つ目は,研究課題と完全にマッチする成果である.即ち,多重配置の自由性に関連する幾何学の導出に成功した.具体的にはまず,二次元多重配置の基底の次数(指標)の差の最大値が,直線の本数マイナス2であることを示し,それを用いて実平面中の直線配置が分割する連結成分の数の下限を与えた.これは即ち,平面の直線族による分割数が,多重配置の代数的情報である指標にコントロールされていることを示唆している.さらに分割数がこの下限と一致する二次元配置の射影化は自由であることも示した.即ち最小分割という幾何学的条件が自由性の一つの特徴づけを与えていることが分かったこととなり,これはまさに多重配置の自由性から導出された新しい『超平面配置の族の幾何学』の発見といえ,大きな進展といえる.本結果はaxXiv:1005.5276として公開しており,現在学術雑誌へ投稿中である. 二つ目の結果は,昨年度得られた結果を発展させた,コクセター型多重配置の自由性に関連するものである.寺尾宏明氏及び若神子篤史氏との共同研究として,B型やF型のようにコクセター配置が二つの群軌道を持つ場合,それぞれの軌道に対応する原始微分の性質を調べ上げ,軌道上で一定な重複度を持つ配置の自由性を証明した.本結果は,部分コクセター群と対応する原始微分を扱う点が極めて独創的であり,またこれらから導入される原始分解と新しいフロベニウス多様体構造との関連も注目に値する結果である.この結果の系として,寺尾氏との共同研究として,Shi-Catalan型配置を導入し,それらの自由性を証明した.これらの結果はそれぞれ,arXiv:1011.0329及びarXiv:1012.5884として公開しており,双方とも学術雑誌へ投稿中である.
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