平成23年度は、論文を四本執筆した。それらは、今までの理論の一般化、ある予想の解決、及び今後の展望を開く新しい概念の導入に関するものである。以下、それぞれの内容を詳述する。第一に、超平面配置とそのZiegler制限の自由性との関連を、それらのベッチ数を通して明確にした。具体的には、吉永正彦氏との共同研究として、上記二つの自由性が第二ベッチ数の同値性と等価であることを示した。また私の単著において、tame配置のカテゴリであれば前者のベッチ数が後者のそれ以上となることを示した。これは平成22年度に示した三次元配置の自由性の、最小部屋数配置としての解釈を深め、研究課題たる自由配置の幾何の探求に寄与するものである。これらはそれぞれarXiv:1109.0668及びarXiv:1109.1042で公開中であり、かつ学術雑誌に投稿中である。次に、平成21年度に出版された論文において縫田光司氏、沼田泰英氏と共に研究したAhanasiadis予想の、完全解決にも成功した。これはA型コクセター配置とその変形であるA型Catalan配置の間の超平面配置の自由性を有向グラフを用いて特徴づける予想であり、組み合わせ論と自由性の関係を明確にする、極めて重要な結果である。本論文は既にMathem atical Research Lettersへの掲載が決定している。最後に、寺尾宏明氏との共同研究として、Shi型配置の自由基底の中で、特殊な性質を持つSimple-root basisの存在証明を与えた。これにより、今まではいわば"定数"項口たる、多重コクセター配置の基底しか見えていなかった、コクセター配置の変形の上部構造が明らかになりつつある。この研究は現在更に進展しており、今後の発展が期待される。本論文はarXiv:1111.3510で公開中で、学術雑誌に投稿中である。以上が研究実績の概要である。
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