研究概要 |
高さとは,代数体上に定義された代数多様体の点(より一般には部分代数多様体)の算術的な「大きさ,複雑さ」を測る量と考えられる.代数多様体が「良い」自己写像を持つときには,その写像に関して良く振る舞う高さが存在することがある.このような高さを標準的高さという.今年度はアフィン空間の自己同型に関する大域的,および局所的な標準的高さ関数の研究を進め,プレプリントとしてArXiv上に発表した(arXiv : 0909.3573).また,アフィン空間の自己同型に関する標準的高さや射影空間の射についての標準的高さの,複素数体上に定義された二つの可換な写像に関する有限的な性質への応用や,アフィン空間の自己同型に関する周期的な点の算術的な等分布への応用を考え,いくつかの進展を得ることができた.これらは,標準的高さが算術的な話題に限らず,複素数体上の話題とも関連している点で興味深いと考える.標準的高さとその周辺に関する講演を,京都大学で行われた研究集会「複素力学系とその関連分野の総合的研究」,東京大学で行われた研究集会「代数的整数論とその周辺」,およびアメリカ数学会とアメリカ数学協会の共同研究集会のspecial session「Arithmetic and Nonarchimedean Dynamics」で講演する機会に恵まれた.また,東京大学の吉川謙一氏と共同で楕円j関数とBorcherdsのΦ関数の関係とその算術的な性質についての研究を進めることができた.これに関連する講演を,多変数関数論葉山シンポジウムで講演する機会に恵まれた.
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