研究概要 |
代数多様体が「良い」自己写像を持つときに,その反復合成に関する性質はとくに複素数体上で深く調べられている.代数体上に定義された代数多様体の有理点については,その算術的な「大きさ,複雑さ」を測る量として高さとよばれる量があり,「良い」自己写像を持つ場合には,その写像に関して良く振る舞う高さが存在することがある.このような高さを標準的高さという..今年度は,アフィン空間の良い自己同型が二つある場合に,それらに関する標準的高さの差がみたす有限性について調べた.また,一般に有理数体を含む環上で定義されたアフィン空間の自己同型の次数の増大度がどうなるかを考えた.単純な場合として,ジャコビアンが1のアフィン平面の三角自己同型の場合を考えた.ある次数付き環のヒルベルト級数を求めることで,三角自己同型の次数をd(3以上)とすると.次数の増大度はdの2次式(最善と思われる評価)で押さえられることが分かった.なお.複素数体上で定義されている場合は次数の増大度はdである.アフィン空間の三角自己同型の場合も.次数の増大度は.ジャコビアンの逆数の次数とdの多項式で押さえられることが分かうた:また,楕円曲線の直積型のクンマー曲面は.固定点を持たない二種類の対合をもつ.京都大学の吉川謙一氏と向井茂氏と共同で.直積型クンマー曲面のこれらの対合の商として得られるエンリケス曲面でのBorcherdsのΦ関数の値(のいくつかの積)についての研究を進めることができた.
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