符号理論、ジーゲルモジュラー形式に関する新しい結果は得ることはなかった。具体的には符号に付随するEisenstein多項式ではその環の商体をとらえることができなかったのと、古典的な整数論に対する理解度の低さから整数論的結果に到達するまではいかなかった。しかしながら4年間の研究として考えると、最初の1年は基礎知識の充実と資料・情報収集にかなりの時間を費やすことができた。新型インフルエンザの影響もあり、年度の途中までは出張も控えていたが、その分を基礎研究にあてられたことは幸いであった。年度の最後には代数曲線の専門家を招へいし、勉強会を持つことができた。関連した事柄を述べていく。符号に付随するEisenstein多項式は重さが8の倍数のところだけ公表しており、重さが2の倍数のところでも定義したいのである。このあたりのアイデアはあって、Barnes-Wall格子との関連性もわかりつつある。私の得た結果からEisenstein多項式のなす環の商体内における正規化は重み多項式環全体と一致することが予想できる。それにはEisenstein多項式のなす環の商体をとらえる必要があるのであるが、_ここが攻略できていない。これはモジュラー形式と状況が全く似ており、SiegelによるEisenstein級数のなす環の商体がモジュラー形式のなす環の商体と一致するという証明をヒントに考えたが、結果を得るに至らなかった。 物理からの要請からスタートしたある特殊な性質をもつ尖点形式について、Poor-YuenはOura-Poor-Salvati Manni-Yuenの結果を超楕円曲線に制限した場合に議論し、著しい結果を得ている。不変式論と関連した興味深い結果であり、私の今後の研究に大きな影響を及ぼすと思われる。
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