種数 g の整数環上の斜交群がテータ関数に作用したとき、ある有限群 Hg が得られる。この有限群を利用して、B.Runge はジーゲルモジュラー形式を不変式論的にとらえた。ここに現れる不変式環は組合せ論的に考察することができた。そこで私はモジュラー形式における Eisenstein 級数に対応するものをこの不変式環にもとめ、E-多項式と定義し、研究を行ってきた。E-多項式は有限群 Hg とその部分群 S との組としてとらえることができるのだが、これは今後、一般の有限群に対して E-多項式を定義するときに重要と思われる。E-多項式にテータ関数を代入したとき、モジュラー形式が得られるのであるが、このモジュラー形式のゼロ点が Eisenstein 級数のゼロ点の持つ性質と似通っていることもわかっている。 さて、剰余類 X=S\Hg の上に Hg は可移に作用するのであるが、このとき centralizer ring を考察することができる。この centralizer ring は代数的組合せ論的な考察が可能である。種数が低い場合に調べてみた。Barnes-Wall 格子と密接な関係があるはずであるが、それを的確に記述できるところまでは達しておらず、これからの研究課題である。一般のE-多項式についても、今行っている特別な場合をもとに展開したい。
|