研究概要 |
本年度は主にp進体上の代数群GSp(4)に伴うRapoport-Zink空間のエタールコホモロジーに関する研究に取り組んだ.この空間は,2次元,高さ4のp可除群とその主偏極の組の変形空間として得られる形式スキームである.その形式スキームに伴うリジッド空間(adic空間)上には,レベル構造を考えることで塔ができ(Rapoport-Zink塔と呼ばれる),そのエタールコホモロジーにはGSp(4)とその内部型J,およびWeil群が自然に作用する.この作用によってエタールコホモロジーを分解すると,GSp(4), J, Weil群の表現の間に興味深い対応が得られるだろうという予想がKottwitz, Rapoportによってなされている.この予想は,GL(n)の場合の非可換Lubin-Tate理論(局所Langlands対応,局所Jacquet-Langlands対応の幾何的実現)の一般化にあたり,数論,表現論の双方の立場から見ても極めて重要な研究課題である. 本年度は,Rapoport-Zink塔のi次コホモロジーにGSp(4)の超尖点表現が現れるのはiが2,3,4の場合に限ることを証明しようと試みた.超尖点表現とは,p進代数群の既約表現のうち最も面白いクラスである(実際,他の表現は超尖点表現から放物型誘導によって作られる).基本的な方針は,GL(n)の場合の当該研究者の以前の研究をGSp(4)の場合に適用するというものであるが,Rapoport-Zink空間が非有限型であるという不都合があるため,様々な部分で困難が生じる.それらを克服するため,形式スキームの隣接輪体に関する基礎研究を進め,また,Bernstein中心を始めとする表現論の様々な技術を取り入れることにした.その結果,本年度の目標であった非尖点性の証明はおおむね達成できたと考えている.現在は詳細を確認しつつ論文を作成している状況である.
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