研究概要 |
次の公表した論文の概要について述べる. [1] Some topics related to universality for L-functions with an Euler product, to appear in Analysis. [2] The universality for linear combinations of Lerch zeta functions and the Tornheim-Hurwitz type of double zeta function, to appear in Monatshefte fur Mathematik. [1] では,T. Nakamura,The joint universality and the generalized strong recurrence for Dirichlet L-functions. Acta Arith. 138 (2009), no.4, 357-362.で得られた同時普遍性を,Dirichlet L-functionを含むSteuding classと呼ばれるものにも適用した.さらに上記の論文では2次元の場合でしか得られてなかった同時普遍性を,有限次元に拡張した.さらにSelberg classと呼ばれるものとも関連付けることにより,一般リーマン予想と一般強再帰性との関係を明確にした.そして普遍性の密度の上からの評価を求めた. [2] では,J. Kaczorowski, A. Laurincikas and J. Steuding, On the value distribution of shifts of universal Dirichlet L. series. Monatsh. Math. 147 (2006) no.4, 309-317で得られたLerchゼータ関数の線型結合の普遍性に関する結果を改良した.彼らの論文では線型結合について条件が付いていたのだが,その仮定を外すことに成功した(ただし彼らは他のゼータ関数についても線型結合の普遍性を示している).Lerchゼータ関数の線型結合の普遍性の応用として,Tornheim-Hurwitz type of double zeta functionの普遍性を示した. 普遍性とは任意の(零点を持たない)正則関数がゼータ関数の虚部方向の平行移動で一様に近似できるというもの,ゼータ関数の値分布論では良く知られた定理で,1975年Voroninにより示された. Dirichlet L関数はリーマンゼータ関数の拡張で,Euler積表示と級数表示持つ,Selberg classとSteuding classはそれらを含むEuler積表示と級数表示を持つゼータ関数の族である. リーマン予想とは現代数学最大の問題であり,リーマンゼータ関数の非自明零点が一直線上に並ぶであろうというものである.強再帰性とはリーマン予想を普遍性の言葉で書き換えたものであり,リーマン予想と同値である.1982年Bagchiにより提唱された.
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