研究概要 |
次の公表した論文の概要について述べる. [1] The generalized strong recurrence for non-zero rational parameter, Archiv der Mathematik 95 (2010), 549-555. [2] On universality for linear combinations of L-functions, to appear in Monatshefte fuer Mathematik. [1]ではRiemannゼータ関数の自己近似性を扱った.Riemannゼータ関数は殆ど全ての実数パラメーターdに対して,一般化された自己近似性を持つことが証明され,その後Pa\'nkowski氏により$d$が無理数であるときの自己近似性が証明された.この論文では残されたdが0でない有理数である場合を証明した(d=0である場合はRiemann予想と同値である).Garunku\v{s}tis氏もこの結果を独立に証明したことを注意しておく. [2]はポーランドの若手数学者Pa\'nkowski氏との共同研究である.この論文において,エスターマンゼータ関数などの数論的関数に関連するゼータ関数,特別な概均質ベクトル空間のゼータ関数,2重又は3重Euler-Zagier型多重ゼータ関数の普遍性,特にパラメーターが有理数である場合を証明した.この論文により混合普遍性の全く新たな応用が見出されたと考えている. 用語の解説をする.Euler-Zagier型多重ゼータ関数の発端はEulerによる1775年の論文である.これが再び注目されたのは1990年代に入ってからで,量子群や結び目不変量,数論幾何学など多方面との関連により,Euler-Zagier型多重ゼータ値,即ち変数が全て自然数である場合が注目されるようになった.Riemannゼータ関数の普遍性とは,任意の零点を持たない正則関数はRiemannゼータ関数の虚部方向の平行移動S\zeta(s+i\tau)$により一様に近似でき,さらに近似できる$\tau$の密度は正になるという定理である.Riemam予想はRiemannゼータ関数が自己近似性を持つ,即ちRiemannゼータ関数の虚部方向の平行移動$\zeta(s+i\tau)$によりRiemannゼータ関数$\zeta(s)$が近似される,と同値である.混合普遍性とは,上記の普遍性とKroneckerの近似定理を組み合わせたもので,普遍性より強い性質である.
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