研究概要 |
今年度はこの研究の大きな目標の一つである次数2のシンプレクティック群GSp(2)とその内部形式である符号(1,1)の四元数ユニタリー群GSp(1,1)の間の保型L関数を保存する対応、つまりジャッケ-ラングランズ対応を保型形式のレベルで実現する研究について大きな進展があった。 より詳しくは、この対応を、GSp(1,1)へのテータリフトとGSp(2)へのテータリフトによって構成される尖点形式を使って与えるというこれまで続けてきた研究について、かなり一般的な状況設定で研究できることが分かった。具体的にはGSp(1,1)の尖点形式に関してこれまで無限素点で四元数離散系列表現を生成するという条件と有限素点である特定の極大コンパクト群に関して右不変という条件が必要であったが、無限素点では任意の離散系列表現でよく、分岐有限素点での極大コンパクト群の選び方は何でもよいことが分かった。更に次のステップとして、このジャッケ-ラングランス対応を表現論の言葉で翻訳するという研究を始めたが、オクラホマ大学のラルフ・シュミッドやアメヤ・ピターレとの共同研究により、当研究に必要な表現論的情報が相当程度揃ったことが分かった。来年度これらをまとめてテータリフトで与えられるジャッケ-ラングランズ対応を表現論の言葉で解釈する研究の見通しが立ったと言える.ジャッケ-ラングランズ対応の一般線型群の場合は既に完成しているが,我々の考えている場合はまだ十分研究されているとは言えず、例すら作られていないと思われる。 一方で例外型リー群G2上のホウィッタカー関数の計算も今年度は行い、この関数を特徴づける微分方程式を、その解の計算が実行できるところまで書き下す見通しを立てたところである。この関数の計算は、フーリエ展開の理論を作るのみならず、ある程度の抽象論しかなかった群G2上の保型形式を具体的に構成する研究につながるものである。来年度はこの微分方程式を解くことでホウィッタカー関数を知られている特殊関数で書き下す研究を考えている。
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