2003年にShestakovとUmirbaevが与えたアルゴリズムにより、3変数多項式環の任意の自己同型について、それが順であるか野生であるか判定することが原理的に可能になった。しかし、このアルゴリズムを実際に用いるのは難しく、今まで簡単か場合に対する適用例しか知られていなかった。 昨年度の研究で、我々はこの状況を打破する重要な進展を得た。従前の研究において、我々はすでにShestakovとUmirbaevのアルゴリズムの精密化を行い、より実効的かアルゴリズムを得ていた。それに加え、今回はさらに独自に考案した新しい手法を用いることにより、様々な自己同型を組織的に分析することが可能にかった。そして、実際に多くの自己同型が野生であることを証明することに成功した。その結果、国際的にも知られていたいくつかの問題が決着した。 この成果は、すでに国際会議や海外の研究所の講演会、国内の研究集会などで公表し、関連分野の専門家から大きな反響を呼んだ。 2009年8月と2010年3月には、Indian Statistical Institute(インド)のダッタ氏の招きで当研究所を訪問し、「座標」の性質に関するある著名な問題について議論を行った。我々の進めている研究と、ダッタ氏の研究をすり合わせ、この問題の解決への道筋を探り、一定の感触を得た。 年度末には、ShestakovとUmirbaevのアルゴリズムの改良版を元に、各ステップを具体的に記述したアルゴリズムを作成した。このアルゴリズムに基づいて、3変数多項式環の自己同型の順性を判定するためのソフトウエアを開発することは、次年度の検討課題である。
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