研究課題
多項式環の自己同型が、簡単な形の自己同型を合成して構成できる(順である)かどうか判定するのは非常に難しい問題である。平成21年度と22年度は、多項式環を扱うための効果的な手法を開発しながら、その応用としてこの問題に取り組んできた。これらの研究について再検討する中で、「順交叉」という概念が浮かび上がった。この概念は、多項式環の自己同型が順でないことを立証する上で極めて有効である。そこで、「順交叉」の観点から、整域上の多項式環の自己同型の順性に関する研究を行い、色々な興味深い結果を得た。多項式環を扱うために「イニシャル代数」の手法は有効である。この手法を一般化するために、体におけるAbhyankar付値に関する研究を行った。そして、Abhyankar付値を部分体に制限して得られる付値の性質について、結果を得た。多項式環の自己同型群を群論的な観点から研究しているEricEdo氏(University of New Caledonia)と共同研究を行うため、University of New Caledoniaを訪問した。滞在中に、自己同型の順性と重みつき多重次数の関係について研究した。平成22年度から情報系研究者と共同で開発を進めていた、多項式環の自己同型の順性判定ソフトウエアがついに完成した。このソフトウエアは代数計算ソフト「Magma」上で動く。3変数多項式環の自己同型を定義する3つの多項式を入力すると、その自己同型が順であるかどうか即座に判定結果が出力される。このソフトウエアは、http://arith. math. se. tmu. ac. jp/tame/index. htmlにおいて、詳しい使用法とともに公開されている。研究成果を論文にまとめたり、関連分野の国内外の研究集会で発表したりした。3年にわたる研究期間の最終年度であるため、研究全体の総括を行うとともに、今後の研究への展望を模索した。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件)
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