本研究の目的は3次元(より一般に高次元の)代数多様体上の曲線の無限小変形の障害類が消えないための、分かりやすい条件を与える事である。Mumfordの与えた3次元射影空間内の曲線のヒルベルトスキームの非被約成分を一般化、もしくは簡易化することにより、曲線の変形障害と曲線を含む曲面上の第一種例外曲線との間の不思議な関係を理解する事を主眼に研究を行っている。本年度は、様々な3次元代数多様体上の曲線の被障害変形の具体例について考察した。1位無限小変形が2位変形にリフトする為の障害類はコホモロジーのカップ積として表わされ、これを具体的に計算し、非零を示すのは容易でない。本年度に出版された京都大学の向井茂氏との共著論文では、このカップ積の計算を実行し、障害類が消えない為の十分条件を与えた。この結果を第一種例外曲線の本数が複数の場合に一般化し、非特異3次曲面上の曲線に適用することで、空間曲線のヒルベルトスキームの非被約成分に関するある予想(Kleppe-Ellia予想)を曲線が線形正規かつ2次的正規な場合に証明する事に成功した。北海道大学や高知大学における研究集会に参加し、本研究成果に関する発表を行った。また佐賀大学と熊本大学における研究集会に参加し、他の参加者と関連の話題について議論を行った。3月に京都大学に滞在し、向井茂氏と共同で議論を行った結果、一般の種数6曲線から次数4の3次元デルペッツォ多様体へのHomスキームの非被約成分の例を得た。
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