研究概要 |
平成21年度の研究実績としては,前年度の研究でうまく機能しないことが示されてしまった手法とは全く異なる新しい手法によって,無限の傾きを持つ楕円的固有形式のp-進解析的な無限族の構成問題の研究を促進できたということが挙げられる. この問題の解決は,ヒルベルト固有形式に付随するガロア表現の普遍変形空間の構造を解析するうえで,これまでにない新しい光を当てることができると期待されており,「研究の目的」で記述した「ヒルベルト版グベアの予想」の解決にも有用であろうと思われているものである.しかし,これまでも様々な専門家と研究打ち合わせをした際に否定的な見解を示される場合も多く,とりわけ謎に満ちた問題であることも事実である. 今,取り組んでいる手法は,有理数体上の四元数環の乗法群の有限次元表現の構造を詳細に解析し,それらの導手に関するp-進解析的な無限族を構成しようというものであり,今年度の研究では,国内外の研究集会に参加しながら専門家と幅広く研究打ち合わせをし,また整数論の専門書を購入し研鐙を深めることで,四元数環の整数論についての理解と研究を大いに促進できた. 今現在,この新たな手法でどこまで状況を打開できるか,非常に大事な局面を迎えているところであり,来年度も引き続き,無限の傾きを持つ楕円的固有形式のp-進解析的な無限族の構成問題に取り組み,普遍変形空間の幾何的性質の解析を深く促進してまいりたい.
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