環積のゲルファントペアを通じてクラウチャック多項式の多変数版である直交多項式が得られるが、RahmanとGruenbaumがそれらの直交性に関する必要純分条件を4変数かつパラメータに解析的な条件のつく特別な場合に与えた。彼らの手法は解析的でかなり複雑なものであるが、それに対し簡明かつ一般の場合を含む拡張を与えることができた。この一般化はパラメータに制限も無く、変数も任意である。それによってわかったことは、この多項式の直交性を制御するのは単純な行列の関係式だということである。これは群や帯球関数のテーブルが満たす直交関係の拡張であると考えることができる。したがってこれの示唆するところは、本件球の目的である多変数q-直交多項式を得るひとつの方法はこの研究によって得られた行列関係式のq-類似を考えることによって得られるのではないか、ということである。また、近年話題になりつつある代数的統計学との接点に関する研究も行った。プレプリントで単項式多項式の確率論への応用をまとめたが、それに対してDiaconisからの問い合わせがあり、どうやらさらに有効な応用が存在するようである。この研究も直交多項式をとりまく本研究の目然な応用である。また、有限シュバレー群のあるゲルファントペアの球関数の研究もはじめた。これはまだ、進行中であり、十分な結果が得られたわけではないが、本研究を推進する上で重要な役割を演じるはずである。そして、前年度に投稿した環積のねじれゲルファントペアに関する論文が無事採択された。
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