本研究の目的は群論を背景に持つ特殊関数たちの導出であり、さらにそれらが新しい超幾何型の多変数直交関数として得られることである。その関数の"器"の一つとして期待されるのが、青本・ゲルファントの超幾何関数であり、2OO4年に代表者が複素鏡映群の場合にこれを実現している。そして、この場合の代数としての拡張である種々のヘッケ代数を考えることは自然であり、いわゆるq-超幾何型の直交多項式への道筋として正当なものでもある。 本年度はまず、前年度より引き続き、エキゾチックなシュバレー群のゲルファントペアの計算を考えた。しかし、この研究の目的は具体的な関数であり、この方法ではなかなか実態が見えてこなかったので、方針を変更し、これらの仮想的な群の表現論の骨組みを与える有木・小池代数より生ずる球関数の導出を試みた、有木と小池の元論文にあるヤングの半正規表現を用いて様々な計算をした結果、岩堀ヘッケ代数からの誘導表現に現れる不変元が明らかになった。この不変元の半正規基底での展開係数は有木・小池代数の作用によって高々パラメーターたちの整数係数の多項式になることも分かった。ただし、これら不変元を有木・小池代数の岩堀ヘッケ代数による両(相対)不変な関数に持ち上げる際に必要と思われる、表現空間上の計量をうまく定めることはできなかった。 しかし、この方針で得られた不変元は、上記の係数の件もあって大変扱いが容易であり、特殊関数の計算に十分に役立つことが予想される。そして、いずれ良い計量を定めることにより、新しい多変数のq-直交多項式が得られるであろう。
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