自由結合代数の微分のなすリー代数のアーベル化について考察を行った。有理数上のベクトル空間でanti-symetryとJacobiidentityを満たす有理数上の双線型写像を持つものをリー代数と呼び、このとき、その双線型写像をブラケット写像と呼ぶ。また、リー代数に対して、そのブラケット写像の像で割ったものをリー代数のアーベル化と呼ぶ。さらにリー代数が次数付けされ、その次数付けがブラケット写像で閉じているとき、リー代数のアーベル化は直和分解することができる。その各次数をweightと呼ぶことにする。 ここでは、2個以上の基底を持つ有理数上のベクトル空間を考え、それによって生成される定数部分のないテンソル空間を考える。このテンソル空間上の自身への線型写像で(ライプニッツルールのような)ある条件を満たすものを微分と呼ぶ。この微分の集合は自然に次数付きリー代数の構造を持つ。ブラケット写像は次数1の部分への作用によって特徴づけられる。このとき、正次数の微分全体のアーベル化の次数2の部分は元のベクトル空間の2階テンソルと同型であることを示した。これは基底の個数が少ないときに森田茂之氏によって示されていたものであるが、一般の基底の個数で成立することを証明した。また、次数が3以上のときは次数よりも基底の個数が多いとき、すなわち安定的には正次数の微分全体のアーベル化は消えることを証明した。これにより正次数の微分全体はリー代数として安定的には有限生成であることが示されたことになる。
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