研究概要 |
本研究の最初の年である2009年度は当初の計画通り,2009年7月~11月,ドイツBielefeld大学に滞在し,Alexander Grigoryan教授と共同で研究目的1:「Sobolev型不等式の臨界に表れる幾何構造の抽出」の1-1「Bottleneck effectを通したPincare不等式の必要十分条件」,1-3「連結和上の熱核の評価に対応するSobolev型不等式」に該当する研究を行い,熱核のbottleneck型評価から空間の機何学的性質を抽出することに成功した. 2つの非コンパクトリーマン多様体の連結和の空間は,Molchanov, Kuzmenko, Heinonen, Koskelaらによるこれまでの研究によりLiouville propertyやPoincareの不等式が成立しないなど,ユークリッド空間とは調和解析的に異なる空間として注目されてきた.Grigoryan, Saloff-Costeは2009年の論文において,非コンパクトリーマン多様体の連結和上のそれぞれ別のendに属する2点間の熱核はbottleneck effectを受けて小さくなることを明らかにした. 本研究ではこの結果の逆を研究し,空間のある2つの部分間における熱核がbottleneck型評価を持つならば,(1)その間のある部分のcapacityが有限であること,(2)ball上のfirst Neumann固有値がユークリッド空間のballの半径に対する減衰スピードよりも小さいこと(Poincare不等式が成り立たないこと),を明らかにした.これはスペクトル幾何的にも非常に興味深い結果であると言える.本成果は9月以降の学会発表にて発表し,現在投稿準備中である.
|