研究概要 |
本年度は研究目的の研究「1 : Sobolev型不等式に現れる幾何構造の抽出」に従い、ポアンカレの不等式が成り立たず、従来の枠組みが適用できない非コンパクトリーマン多様体の連結和上の解析を主テーマとした。特に、空間の解析的性質と幾何構造の関係を探るために連結部分が非コンパクトである連結和上の熱核の長時間挙動についてビーレフェルト大学のAlexander Grigoryan教授とともに研究し、次の事実を明らかにした。 ・2つのユークリッド空間の連結和で、連結部分が凸などの良い条件を持てば等周不等式が成り立つことを明らかにした。これによりこのような連結和では熱核が上からのグローバルなガウス型評価を持つことがわかった。 ・2つのn次元ユークリッド空間内の0≦m≦n-2次元部分空間に沿った連結和,および0≦α<1の増大度を持つ回転体に沿った連結和という典型的な非コンパクト部分集合に沿った連結和の例において,hitting probabilityのシャープな評価を求めた。 ・熱核が上下からガウス型評価を持つ非コンパクトリーマン多様体のある非コンパクト部分集合を除いた領域上のDirichlet熱核の下からのガウス型評価を明らかにした。 ・以上の事実を用いて、2つのユークリッド空間の非コンパクト部分集合に沿った連結和の上記で述べた2つの典型的な例において、互いに異なるエンドに属する2点間における熱核の長時間挙動のシャープな評価を求めた。これらの成果はGrigoryan教授と共同で論文としてまとめ,現在投稿準備中である。
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