本年度に実施した研究の成果は、ハンドル体結び目に対して定義される"量子不変量"のorderの低い係数は退化している、ということを明らかにしたことです。ハンドル体結び目とは3次元球面に埋め込まれたハンドル体のことです。二つのハンドル体結び目は連続変形で移りあうときに同値であると定義されます。ハンドル体結び目は空間グラフの近傍同値類と同値な概念です。与えられた二つのハンドル体結び目を区別することは基本的な問題ですが、ハンドル体結び目を分類するための不変量は十分に見つかっていません。交点数が低いハンドル体結び目の中でさえも区別できていない組がいくつかあります。量子不変量は結び目や3次元多様体に対して定義されている不変量であり、リー環とその表現を固定するごとに統一的な方法で不変量を構成することができます。ハンドル体結び目に対しても量子不変量が定義されることで統一的な方法でたくさんの不変量を構成することができるようになると思われます。本年度に実施した研究で得られた成果は、ハンドル体結び目に対して"量子不変量"が定義されたとすると、それはorderの低い係数が退化したものになっているということです。このような研究成果を得るためには、科学研究費補助金を用いて出張を行い、研究会議で国内外の研究者と議論を交わすことが重要でした。特に、6月には科学研究費補助金を用いてハンドル体結び目に関する研究会「ハンドル体結び目とその周辺II」を主催しました。研究会では本研究に関する意見交換が活発に行われました。
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