本年度に実施した研究の成果は、空間グラフ全体に対してIH-complexの構造を与え、空間グラフの間のIH-distanceを不変量を用いて評価したことです。ハンドル体結び目と空間グラフをつなぐキーワードは近傍同値です。ハンドル体結び目とは3次元球面に埋め込まれたハンドル体のことです。二つのハンドル体結び目は連続変形で移りあうときに同値であると定義されます。空間グラフを近傍同値で考えたものがハンドル体結び目になります。IH-complexにおいてIH-moveで移りあう空間グラフは1-simplexでつながるので、IH-complexの連結成分の一つ一つがハンドル体結び目に対応します。空間グラフが"自明である"または"最も簡単である"ことを定義することは空間グラフ理論において基本的な問題の一つです。空間グラフが自明なハンドル体結び目を表すことは、空間グラフが"自明である"または"最も簡単である"ための必要条件の一つになります。よって、自明ハンドル体結び目に対応する空間グラフの属するIH-complexの連結成分の形を知ることが空間グラフの自明性を定義する上で重要になります。本年度に実施した研究で得られた成果は、IH-complexの形を知るために、ハンドル体結び目の不変量を用いてIH-distanceを評価する方法を開発したことです。このような研究成果を得るためには、科学研究費補助金を用いて出張を行い、研究会議で国内外の研究者と議論を交わすことが重要でした。特に、5月には科学研究費補助金を用いてハンドル体結び目に関する研究会「ハンドル体結び目とその周辺III」を開催しました。研究会では本研究に関する意見交換が活発に行われました。
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