本年度に実施した研究の成果は、カンドル彩色不変量を用いてハンドル体結び目の既約性を判定する方法を開発したことです。ハンドル体結び目は3次元球面に埋め込まれたハンドル体であり、このハンドル体と本質的円板で交わる球面が存在するとき、ハンドル体結び目は可約であるといいます。ハンドル体結び目は可約でないときに既約であるといいます。ハンドル体結び目が可約であることは実際に分解球面を見つけることで示すことができますが、ハンドル体結び目が既約であることは分解球面の存在を仮定して矛盾を導く必要があります。一方、カンドル彩色不変量は、カンドルとよばれる代数によるダイアグラムの彩色数のことです。カンドルは結び目の基本変形に動機づけられた公理によって定義されますが、これを石井、岩切、大城、Jangによって導入されたカンドルのG族に置き換えることで、ハンドル体結び目に対してもカンドル彩色不変量を定義することができます。本年度に実施した研究で得られた成果は、ハンドル体結び目の表を作成するときにも重要である既約性というハンドル体結び目の性質をカンドル彩色不変量を用いて捉えたことにあります。このような研究成果を得るためには、科学研究費補助金を用いて出張を行い、研究会議で国内外の研究者と議論を交わすことが重要でした。特に、3月には科学研究費補助金を用いてハンドル体結び目に関する研究会「ハンドル体結び目とその周辺IV」を開催しました。研究会では本研究に関する意見交換が活発に行われました。
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