研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである.昨年度に引き続き,Lytchak氏(ミュンスター大学)との曲率が上に有界な距離空間に対する求積可能性,局所位相正則性,CAT(1)空間に対する球面定理などの一連の共同研究を研究論文の完成に向けて推進した.さらに本年度はLytchak氏との共同研究として,研究計画で述べた特異性の弱い非多様体点に対する次の位相正則性に関する研究を行った.nを2以上の自然数とする.Tを3個以上の点からなる離散距離空間とする.局所コンパクト,測地的完備,n次元CAT(k)空間X内の任意の非多様体点xに対して,xにおける方向空間が(n-2)次元標準単位球面と離散距離空間Tとの球面的結にGromov-Hausdorff距離で十分近いと仮定する.このとき,xの十分小さな近傍は高々有限個のn次元円板の和集合として表されることを証明した.さらに,互いに異なるそれらのn次元円板を任意に2つ選べば,その和集合は(n-1)次元円板と3個の離散距離空間を端点にもつ樹木との直積空間に同相であることを証明した.これらの成果も,一連の共同研究の一つとして,研究論文に執筆する予定である.これら一連の共同研究は,いずれも曲率が上に有界な距離空間の位相構造に関する汎用性の高い結果である.本研究の研究目標の一つである多面体位相正則性の問題に密接に関連しており,曲率が有界な空間の計量的な幾何学と幾何学的トポロジーの融合として,今後の発展が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究目標の一つである特異性の弱い非多様体点に対する位相正則性には到達したが,その一方で,Lytchak氏との一連の共同研究は,議論が非常に長く,かつ非常に複雑であり,論文執筆に時間を要しているため.
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