本研究の目的は、結び目理論における最近の二つの発見、すなわちOzsvath-Szabo-RasmussenによるFloerホモロジーとKhovanov-RozanskyのHomflyホモロジーを、(できるだけ組み合わせ理論的な)単一のフレームワークに統合することである。これは、いわゆるスピン-c多胞体の詳しい検討によって実現できると考え、Tutteの多項式の一般化として導入したハイパーグラフ(およびポリマトロイド)の不変性を使って、検討してきた。ハイパーグラフの不変性は二つのホモロジーを統合するための基礎になると考えられるが、実はその鍵となる考え方についていまだに完全な証明がない。これは辺と頂点を入れ替えた場合についての相対原理に関するものである。そこで、この証明を見出すことが重要であり、当該年度の研究において実現しようと試みた。また別の仮説を立てて研究を続けた。それは、交替結び目のHomfly多項式と結び目のSeifertグラフのTutte多項式とが対応するだろうということで、あこの点については、既に証明にかなり近づくことができた。さらに、Alex Beneと共同で別の種類のTutte多項式について研究を進めた。この研究で我々が考えたことは、抽象的なハイパーグラフではなく、種数の大きい面で実現されるハイパーグラフであった。この多項式には、種数を表す余分な変数を導入することが必要である。このことで、われわれは前の場合と同じように、似た性質を示すことができると考えた。この成果を用いれば、われわれの研究を交代しない結び目の場合に拡張することができることを示した。
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