研究概要 |
今年度は,自由群の自己同型群のAndreadakis-Johnson filtrationに関していくつかの進展が得られた.まず,自由群のIA-自己同型群の降中心列が,Andreadakis-Johnson filtrationに一致するかという問題についてであるが,2次の次数商の生成元を計算により具体的に与え,これにより,IA-自己同型群の降中心列とAndreadakis-Johnson filtrationは,次数3の部分群まで一致するという結果が得られた.現在,計算の再確認と,論文にまとめる作業を行っている最中である. 一方で,Andreadakis-Johnson filtrationや,IA-自己同型群の降中心列の各部分群の代数的性質(特に最大アーベル商)を研究する際に,Johnson準同型のみを考察しているのでは,次数商以上の情報は得られない.そこで,各filtrationの次数商以上の情報を直接抽出できるような準同型を構成し,これをしてAndreadakis-Johnson filtrationの研究に応用できないかということを考え,結果として,自由群の自己同型群の,自由群のFricke指標環への作用を考察することで新しい結果をいくつか得ることができた.具体的には,自由群のFricke指標環に,自由群の自己同型群の作用で不変なイデアルの降下列を与え,その「幕零商」に自明に作用するような,自由群の自己同型たちのなす正規部分群を考えると,自由群の自己同型群に,一つの降下filtration Eが定義される.本年度は,このfiltrationがAndreadakis-Johnson filtrationとどのくらいずれているのかを考察し,その結果,各次数kに対して,Eのk番目の群は,Andreadakis-Johnson filtrationの2k番目の群を含むことが分かった.現在は,より詳細に,その差について研究中である.
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