3次元球面内の結び目補空間には性質の良い、深度が有限の余次元1の葉層構造が存在することがD.Gabai氏により示されている。実際、sutured manifoldと呼ばれる、結び目由来の情報つき3次元多様体を用いて具体的に構成することができる。しかし実際に構成するためには、sutured manifold decompositionに用いる曲面の族をうまく選ぶ必要があること、また葉層構造を構成する葉は一般にコンパクトでないことから、実際に葉層構造の様子を把握するのは難しく、葉の形、葉のふるまいに関してはほとんどわかっていない。 そこで本研究では、葉層構造の様子を具体的に観察するために計算機を用いて具体例を構成し視覚化することに取り組んだ。三次元球面内の結び目補空間をザイフェルト曲面で切り開くとハンドル体になることから、第一段階として今年度はハンドル体から出発して曲面の族をうまく選ぶことに取り組んだ。具体的にはハンドル体の境界である、向き付けられた曲面上の単純閉曲線を文字列で表し、イソトピー変形およびハンドル体の内側と外側を入れ替える操作に対応する文字列の変形を与えた。 この文字列をもとに計算機で描画する仕組み、および複数の単純閉曲線の語を与えたときにそれらの最小交点数を求める仕組み、さらに、sutured manifold decompositionに対応する文字列の変形について桐生裕介氏(スタジオフォンズ)と共同で検討中である。
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