研究概要 |
3次元球面内の任意の結び目補空間には、性質の良い余次元1の葉層構造が存在することが知られている。しかし葉層構造の葉は一般にコンパクトでないため実際に葉層構造の様子を把握するのは難しく、葉の形、葉のふるまいに関して知られていることはあまり多くない。一方、本質的曲面と葉層構造の中間の性質をもつ本質的laminationという概念がある。本質的laminationは、それ自身はコンパクトではないが、コンパクトな対象である本質的branched surfaceを用いて調べることが可能である。また、任意のコンパクトで向きづけ可能な3次元多様体はHeegaard分解をもつことが知られている。Heegaard分解とは多様体を、向き付けられた閉曲面(Heegaard曲面)のみで交わる2つの単純な多様体に分解するものであるが、Heegaard曲面と本質的曲面の交わりの曲線をみることにより多様体の位相的性質を導くという研究が、Haken,Casson-Gordon,Shultens等によりなされている。研究代表者は本質的laminationの葉とHeegaard曲面の交わりの曲線を本質的branched surfaceを利用して調べ、特にHeegaard曲面の種数が2のとき、コンパクトな対象では起こらない興味深い現象が起こることを確認した(小林毅氏との共同研究)。具体的には、種数2の強既約なHeegaard分解をもつ3次元多様体と、そこに入る横断的向きづけ可能で、非自明なホロノミーを持たない、nowhere denseな本質的laminationが与えられたとき、Heegaard分解の連続変形を考えると、Heegaard曲面と本質的laminationの葉との交わりが、Heegaard分解の片側で円板を張る曲線から一斉にコンパクトでない曲線へと変化する現象を観察し、この現象について研究発表を行った。
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